世界遺産暫定リスト

登録時期

平成13年4月(1回目の推薦)、平成24年9月(拡張登録へ向けた登載)

概要

 平泉は、12世紀の約100年の間に、日本の中央政権の支配領域と本州北部、さらにはその北方の地域との活発な交易活動を基盤としつつ、本州北部の境界領域において成立した政治・行政上の拠点である。それは、武士に起源を持つ奥州藤原氏が、4代にわたって蓄積した莫大な財力を背景としつつ、武力ばかりに頼ることなく、仏教に基づく理想世界である「浄土世界」の実現を目指して造営し、宗教を基軸とする独特の支配の拠点として成立した。
 中心区域には、既に世界遺産一覧表に記載された仏国土(浄土)を具象的に表す仏堂・庭園及びそれらの考古学的遺跡群が含まれるほか、政治・行政権力の中枢である御所(居館)の考古学的遺跡も含まれる。
 また、周辺区域には、「浄土世界」の理念の基層を成した在来の仏教思想に基づく寺院跡のほか、「浄土世界」としての平泉の財力の基盤を成した荘園及び財力によって営まれた工房などの考古学的遺跡群が含まれる。
 さらに中心区域のみならず周辺区域の要所には、計画的に配置された宗教施設の遺跡が存在し、全体として「浄土世界」を表す独特の配置・構造を示している。
 これらの一群の構成資産は今日に至るまで良好に保存され、平泉が「浄土世界」を体現する政治・行政上の拠点として、比類のない事例であることを示している。

「すぐれて普遍的な価値がある」ことの証明

  1. 遺産の適用種別と基準
    記念工作物、遺跡(文化的景観の適用は未定)
    文化遺産の基準(ii)、(iii)、(vi)
  2. 真実性の証明
    • 「浄土世界」を構成する政治・行政上の拠点の構成資産は、現存する寺院の境内・庭園のみならず、数10年間にもわたる発掘調査によって確認されてきた地下の考古学的遺跡などから成り、各々の構成資産の真実性は明らかである。
    • また、政治・行政上の拠点としての平泉が「浄土世界」の実現を目指して造営されたことを示す歴史記録についても、厳密な校訂が加えられており、記述内容の真実性について揺るぎはない。
  3. 完全性の証明
    • 資産は、仏国土(浄土)の形姿を具象的に表現した多様な様式の寺院・庭園をすべて含んでいる。同時に、日本に独特の仏教思想 を反映しつつ、「浄土世界」の実現を目指して造営された政治・行政上の拠点に不可欠の構成資産のすべてを含んでいる。
    • 個々の構成資産は、「浄土世界」を表す政治・行政上の拠点を表す要素として、それぞれ必要な範囲のすべてを含んでいる。
    • 個々の構成資産の保存状況は良好である。また、その周辺環境も良好に維持されており、平泉の「浄土世界」を認知する上で補完的な役割を果たしている。
  4. 類似遺産との比較
    アジア地域において宗教思想の強力な反映の下に造営された政治・行政上の拠点で、世界遺産一覧表に記載されている資産のうち、都城に関連する資産としては、「古都・奈良の文化財」(日本)、「慶州歴史地区」(韓国)、「ラサのポタラ宮歴史地区」(中国)があるほか、我が国の暫定一覧表に記載されている資産としては、「武家の古都鎌倉」(日本)、「飛鳥・藤原の宮都とその関連資産群 」(日本)がある。
     また、「天地の中-登封の歴史的建造物群-」(中国)の推薦から登録に至る資産コンセプトの説明方法等について、比較調査実施した(平成24年8月)。

※ 上記の概要、「すぐれて普遍的な価値がある」ことを証明については、拡張登録に向けた暫定リストの記載内容です。
 世界遺産登録された5資産に加え、柳之御所遺跡、達谷窟、白鳥舘遺跡、長者ケ原廃寺跡及び骨寺村荘園遺跡が構成資産となっています。