「平泉の文化遺産」は、平成23年6月、パリで開催された第35回ユネスコ世界遺産委員会において、世界遺産に登録されました。
 登録名は、「平泉-仏国土(浄土)を表す建築、庭園及び考古学的遺跡群」です。
 「平泉の文化遺産」は、平成20年7月に一度登録延期の決定を受けています。その結果を受け資産の数を絞って再推薦をし、登録に至りました。
 以下に登録までの経緯を示します。
 現在、再推薦の際に除外した資産や、世界遺産委員会の審議で除外された柳之御所遺跡の追加登録に向けた取組を進めています。平成24年度には暫定リストに再度掲載されました。
今後ともご支援、ご協力をお願いします。

1.暫定リストへの搭載

 世界遺産登録への第一段階として、各国が、今後5年〜10年以内に世界遺産へ推薦するために作成している世界遺産暫定リストに、登載されなければなりません。
 「平泉の文化遺産」は、平成12年11月17日に文化財保護審議会の決定を受けて、文化庁が暫定リストへの追加物件として決定しました。その後、平成13年4月6日にユネスコ世界遺産センターにおいて暫定リストに登録されました。
 平成23年の世界遺産登録に伴い、一度暫定リストから除外されましたが、追加登録に向け、平成24年9月25日に再度暫定リストに登載されています。
 現在、暫定リストに登載されているのは、「平泉の文化遺産」のほか「古都鎌倉の寺院・神社ほか」(神奈川県、平成4年)、「彦根城」(滋賀県、平成4年)、「飛鳥・藤原の宮都とその関連資産群」(奈良県、平成19年)、「北海道・北東北の縄文遺跡群」(北海道、青森県、岩手県、秋田県、平成21年)、「金を中心とする佐渡鉱山の遺跡群」(新潟県、平成22年)、「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」(鹿児島県、沖縄県、平成25年)です。

2.前回推薦書提出までの経緯

  1. 推薦資産の確定(平成17年7月
    [1] 中尊寺境内、[2] 毛越寺境内、[3] 柳之御所遺跡、[4] 無量光院跡、[5] 金鶏山、[6] 達谷窟、[7] 骨寺村荘園遺跡、[8] 白鳥舘遺跡、[9] 長者ヶ原廃寺跡
  2. 緩衝地帯の設定(〜平成18年3月)
    コアゾーンの周辺を取り巻く環境や景観を保護するために設けられる利用制限区域のことです。
  3. 景観条例の制定(〜平成18年3月)
    バッファゾーンの設定に伴い、そのエリアの開発規制や景観保全のために、市町では景観条例を制定しました。
  4. 推薦書類作成(〜平成18年6月)
    有識者による検討委員会の指導を受けながら関係市町と連携して推薦書類を作成しました。
    また、6月8日〜11日にかけて開催した国際専門家会議の成果も推薦書に反映させました。
  5. 国へ推薦書類提出(平成18年7月)
    推薦書類(推薦書の案文、図面、写真、ビデオテープなど)をとりまとめ、文化庁に提出しました。
  6. 推薦の決定(平成18年9月14日)
    7月21日に開催された文化審議会文化財分科会に報告・了承され、9月14日に開催された世界遺産条約関係省庁連絡会議により政府として推薦することが決定しました。
  7. 推薦書(暫定版)を世界遺産委員会へ提出(平成18年9月27日)
    ユネスコ世界遺産センターに暫定版の推薦書を提出しました。これは、推薦書類に不備がないかどうかを事前に審査を行うものですが、改善事項等の指摘はありませんでした。
  8. 推薦書を世界遺産委員会へ提出(平成18年12月26日)
    ユネスコ世界遺産センターに推薦書を提出し、受理されました。
    提出された推薦書は、専門的な評価を行うため、文化遺産については国際記念物遺跡会議(ICOMOS)に送られます。

3.国際記念物遺跡会議(イコモス)による審査 [現地調査:平成19年8月27日〜29日]

 世界遺産委員会の登録基準に従って専門的評価を行い、世界遺産委員会に勧告します。8月27日から29日にかけて、ジャガス・ウィーラシンハ氏(スリランカイコモス国内委員会委員)による現地調査が行われました。
平成20年5月23日(金)に、イコモスから「登録延期」の勧告を受けました。

4.世界遺産委員会での審議(平成20年7月2日〜10日)

 カナダ・ケベックシティにおいて第32回世界遺産委員会が開催され、現地時間 7月6日(日)20:36(日本時間7月7日(月)9:36)に、「登録延期」と決議されました。

5.推薦書の再提出

  1. 推薦書作成委員会の設置(平成20年9月)
    平成20年9月から平成21年3月までに、4回を開催しました。また、ユネスコ世界遺産センター及びイコモスから紹介された海外の専門家との打合せも実施しました。(平成21年2月、4月に開催)
  2. 推薦資産の決定(平成21年4月)

    第5回の推薦書作成委員会(4月4日開催)で推薦資産に対する専門家の意見が示され、文化庁、県、一関市、奥州市、平泉町が協議を重ね、4月23日に平成23年に向けての推薦資産が決定しました。
    [1] 中尊寺境内、[2] 毛越寺境内(旧観自在王院庭園を含む)、[3] 無量光院跡、[4] 金鶏山、[5] 柳之御所遺跡

    ※その後、第6回推薦書作成委員会(6月16日開催)において、毛越寺に含まれていた旧観自在王院庭園を分離した方が良いという意見があり、分離のうえ名称を「観自在王院跡」に改め、6資産として確定しました。
    [1] 中尊寺、[2] 毛越寺、[3] 観自在王院跡、[4] 無量光院跡、[5] 金鶏山、[6] 柳之御所遺跡

  3. 推薦の決定(平成21年9月)
    国の文化審議会文化財分科会を経て、世界遺産条約関係省庁連絡会議で推薦の決定。
  4. 推薦書(暫定版)をユネスコ世界遺産センターへ提出(平成21年9月29日)
  5. 推薦書をユネスコ世界遺産センターへ提出(平成22年1月18日)

6.国際記念物遺跡会議(イコモス)による審査 [現地調査:平成22年9月8日〜9日]

 世界遺産委員会の登録基準に従って専門的評価を行い、世界遺産委員会に勧告します。9月8日から9日にかけて王力軍(※軍は簡体字)氏(中国イコモス国内委員会委員)による現地調査が行われました。
 平成23年5月に、イコモスから勧告が提出されました。

7.第35回世界遺産委員会での審議(平成23年6月19日〜29日)

 イコモス勧告を参考にフランス、パリにおける第35回ユネスコ世界遺産委員会で登録の可否について審議されました。

「平泉の文化遺産」世界遺産に決定!

世界遺産の登録基準

  1. 人間の創造的才能を表す傑作である。
  2. 建築、科学技術、記念碑、都市計画、景観設計の発展に重要な影響を与えた、ある期間にわたる価値観の交流又はある文化圏内での価値観の交流を示すものである。
  3. 現存するか消滅しているかにかかわらず、ある文化的伝統又は文明の存在を伝承する物証として無二の存在(少なくとも稀有な存在)である。
  4. 歴史上の重要な段階を物語る建築物、その集合体、科学技術の集合体、あるいは景観を代表する顕著な見本である。
  5. あるひとつの文化(または複数の文化)を特徴づけるような伝統的居住形態若しくは陸上・海上の土地利用形態を代表する顕著な見本である。又は、人類と環境とのふれあいを代表する顕著な見本である(特に不可逆的な変化によりその存続が危ぶまれているもの)。
  6. 顕著な普遍的価値を有する出来事(行事)、生きた伝統、思想、信仰、芸術的作品、あるいは文学的作品と直接または実質的関連がある(この基準は他の基準とあわせて用いられることが望ましい)。